Aliexpressで見つけたとあるレンズによく似た中華レンズ
見たことあるデザインとレンズ構成
このレンズを見つけたのは2021年の夏頃です。無名中華メーカー(自分が知らないだけで有名だったらごめんなさい)のレンズなのにフルサイズ対応しているのが物珍しく興味をそそられました。面白そうなの見つけたとウキウキで商品ページの写真や説明を見ていたら何やら既視感のあるレンズ説明が並んでいました。どこで見たんだろうとしばし考えていたらピンときました。日本のあるメーカーのレンズにとても似ているのです。
その似ているレンズというのは安原製作所という光学メーカーが販売していたANTHY35というレンズです。安原製作所というのは元京セラでカメラ設計に携わっていた安原伸 氏が個人で営業している撮影機材メーカーで安原氏が設計したマニュアルレンズやフィルムカメラを販売していました。現在は安原氏が亡くなってしまったこともあり事業は辞めてしまっています。
で、その似ているRockstar35と ANTHY35の外観やレンズ構成図、MTF曲線を比較してみると・・・
左がRockstarで右がANTHY35です。外観はRockstarにはフードが無いのとフィルター取り付け部が若干違いますがそれ以外の見た目はかなり似ています。外見だけなら似る事もあるでしょうけどレンズ構成、MTF曲線については全くの一緒です。(Rockstarの方のMTF曲線は16mm以降カットされています)
ここまでくるとさすがに偶然の一致とは思えませんね。
安原氏が亡くなった後に設計図などが中国メーカーに流出したのではと想像しています。(Anthy 35の製造は日本となっていますが一部中国生産していたのかもしれませんね。)
存在を忘れていたけど11.11セールで安くなっていたので購入
先にも言ったように夏頃には見つけていたのですが買おうか買わないかずっと迷っているうちにすっかりこのレンズの存在を忘れてしまっていました。その後、先日の独身の日(11月11日に行われる中国最大規模のセール)のセールで18000円から15000円弱まで安くなってるのがおすすめ商品に出てきたのを見つけて思わず購入してしまいました。この価格帯で3000円の値引きは大きいですよね。
開封編
Aliexpressで注文して届くまでには2週間弱掛かりました。これは中国から送料無料で発送した場合の一般的な日数だと思います。
届いた箱にはレンズと岩石星というロゴが書いてあります。岩石(ロック)、星(スター)・・・・なるほど・・・
そして一気に開封してレンズ外観。外観は金属鏡筒で安物感は無く、なかなか良いです。
そしてフィルター溝は2つ切ってあり、52mmと58mmのフィルターに対応しています。これはANTHY35と同じ仕様の様です。ただしANTHY35にはあった内蔵フードはコストカットのためか省略されています。
最小絞りはF16までで普通といったところ。絞り環はクリック感がありますが少し緩く回りやすいのでスカスカな感じがします。撮影中勝手に回るまでは無いと思いますがもう少し固めでもいい気がします。またクリック感はF2以降は1段ずつしかありません。
絞ってみると絞り口径がかなり歪な形状で玉ボケに影響がありそうなレベルでした。ここらへんは中華クオリティって感じです。また小さいですがレンズ前玉に頑固な汚れが最初からついていました。Curaの洗浄液とワイパーで拭いたら綺麗に落ちました。さすがCura。
買ったのがEマウント版なのでα1に装着してみたところです。ほかにもRF、Zマウント用があるようです。
撮影テスト、作例紹介
いきなり逆光撮影から。この写真はもろに太陽入れているのでフレア結構出ているだけかなと思いましたが、端の方に少し強い光源あるだけでもかなりフレアが発生します。部屋の照明でもコントラスト低下が発生するくらい逆光には弱いです。
開放 F1.8 |
F16 |
こちらは別の逆光写真です。ガラス窓越しというのもありますが中心部のコントラストが落ちています。
気になる玉ボケはやはり絞ると歪な絞り口径の形になりました。また綺麗な丸ではなくカクカクしています。
次は口径食テストです。これは絞り開放なので中心は真ん丸です。端に行くにつれてレモンになっていますがこれくらいは普通レベルかなという印象。
次は歪曲と周辺減光のテストです。60cmくらいのとこから撮っているので無限遠ではまた少し違うと思います。
歪曲に関しては少し糸巻き型に若干歪んでいますが気にするほどではないかなと感じます。周辺減光はかなり大きく開放ではかなり光量が落ちます。絞るとF4~5.6くらいまで改善しますが、それ以降はあまり改善せずしつこく残ります。(F16は撮り忘れ泣)
以降は何枚か撮ったその他の作例です。ボケ味など参考なるかと思います。
中華レンズらしく逆光には弱めですが、それはそれで味とも思えるので個人的には悪くないんじゃないかなと思います。オールドレンズでフレア出して遊んでる身とてはそこら辺の懐は広いというのもありますが。。。
解像感などに関しては最近の大手光学メーカーから出ている高級レンズのように解放からバキバキに解像するレンズではないですが、開放でも中心はそこそこに写り、F4くらいまで絞る周辺もかなり解像してきます。また、ボケは特筆すべき点で二線ボケはほとんどでないですし全体的に柔らかいボケで良い感じに見えます。
まとめ
フルサイズ用で35mm F1.8で使いやすい画角と明るさを持つレンズがマニュアルレンズとは言え1.5万で買えて写りもそこまで悪くないと考えると結構コスパが高いレンズだと感じます。特にAnthy譲り(?)の素直なボケはかなりの好印象です。当然値段なりの部分もありますがそこは妥協できる範囲だと思います。
ただANTHY35とまんま同じ中身というのをどう捉えるかは問題かなと思います。「けしからん」と思うのか「まあ、中国だし」と受け入れるのか。(実際のところはパクリなのか引き継いだのかどうかはわかりませんが)
自分は後者なのですが前者の人には輸入とはなりますがB&Hとかで本家ANTHY35がまだ買えるようなのでそちらをお勧めします。
最後に一つ注意点としては元になったAnthy35はEOS Rなどで使うと周辺部に色被りが発生するという欠点があり同じ光学系を持つこのレンズでも同様の傾向だと思われます(センサーが裏面照射型かどうかが影響してそう)。キヤノンユーザーで検討している人は気を付けた方が良いと思います。
【追記】
AstrHori 35mm F1.8という名前で日本でも発売されるようです。公式ページ、alphablogの作例を見る限り同じレンズ構成、描写なのでまんま一緒の物の可能性が高いです。